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クィア [性の多様性]

「性的少数者/セクシュアルマイノリティ」「LGBT」について語られる文脈において、それらにかなり近似した意味で登場する言葉として「クィア」もある。
これは元は英語圏で「変態」という意味合いで侮蔑や嘲笑のニュアンスを込めて使われることが通例だったものが、やがてアメリカでの当事者運動の興隆の中で、そうした一般的な用例を逆手に取って、性的少数者たち自身がプライドを込めて自称するようになっていったという経緯がある。
これがその後、日本語圏にも移入され、適宜使用されるようになっている。英語圏でのこうした背景をもふまえたうえで使用されている例もあるが、ただ、多くの場合はそこまで意識されずに、単純に「セクシュアルマイノリティ」の言い換えのように使われているのではないだろうか。
とはいえ、「LGBT」などが比較的真面目で堅い、いわば「お行儀の良い」文脈と親和的なのに対して、元々が変態を意味した「クィア」だと、そうした場面では捨象されてしまいがちな、より猥雑な、それゆえに豊穣な性の多様性のひろがりを包含して言い表すことがしやすいとも考えられる。筆者も、L、G、B、Tには収まりきらない、良い意味での混沌とした変態性に言及する場合などには、この「クィア」を用いることで、「セクシュアルマイノリティ」の語と使い分けている。

このほか口語表現を中心に、「ずいぶんクィアな◯◯」「このテーマについてもクィアに語ってみる」のような、修飾語的な使い方がされる例も見られる。
それから、「性的少数者」についての学究的な活動や、その成果について言い表す場合には「クィア理論」と呼ばれるようになっている。歴史的には「フェミニズム」や「ジェンダー論」の進展の中でセクシュアルマイノリティ研究も盛んになり、上述したアメリカでの「クィア」の意味合いが否定的なものから積極的なものに転換する流れにも大きな影響を与えている。研究者の間では「フェミニズム」「ジェンダー論」「クィア理論」は、互いに近い密接不可分な位置関係のものとして把握されている。