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MtF/FtM~Xジェンダー [性の多様性]

シスジェンダーを「普通」とする一般社会の指標から見れば、トランスジェンダーは「性別を変えた人」として認識される。ここから、「男性」から「女性」へのトランスジェンダーをMtF( Male to Female )、「女性」から「男性」の場合はFtM( Female to Male )とする表現も成り立っている。
「女性」と「男性」では社会的な配置されている立ち位置が異なるため、トランスジェンダーが直面する状況もまた、MtFとFtMではちがった形で立ち現れる。両者に共通する問題も多い一方、それぞれ特有のものも少なくない。
また、日常生活のほぼすべてをトランスジェンダーとして送るケースを「フルタイム」、トランスジェンダーとして過ごす時間を区切ってトランジションをおこなう場合を「パートタイム」というように言い表すこともされている。これはフルタイムのトランスジェンダーとしての道は、やはり相当にハードルが高いと判断する人が少なくなく、いわゆる「週末だけ女装する」ような方策を選択せざるを得ないケースが多々あることを物語っているだろう。
特にMtFがパートタイムトランスジェンダーとなる場合、「週末だけ女装」のようにまさしくパートタイムな形はよく聞かれるところである。対してFtMの場合は、スカートをはかない・化粧をしない・短い髪などのイメージに表象されるような「男性っぽい女性」として全時間を過ごすような形が多いのではないか(なので「パートタイム」よりは例えば「パーシャル」のほうが実態を言い表せているとも考えられるが、あまりその言い回しは普及していない)。この種のMtFとFtMの相違は、一般社会の通念が、女性が「男性っぽい」ことはまだしも許容しうるが、逆は相当にクリティカルな変態認定に直結していることと深い関係があると言えよう。
なお、MtFとFtMとを問わず、「女性」や「男性」といった希望する性別の人間としてフルタイムで社会生活を営む(そのうえでトランスジェンダーであることを秘匿して平穏に暮らすことを「埋没」と呼ぶ言い方もある)となると、自然な見た目や身のこなしなどをはじめ、周囲との対人関係のやりとりをその性別で円滑にこなすことが必要となってくる。それができている状態を量る概念が「パス」で、「パスできている」「パス度が高い」などはトランスジェンダーの間ではデリケートな課題となっていたりする。
もっとも、トランスジェンダー系の性的少数者がすべて、既存の「女性」「男性」枠組みに適合したいと考えるとも限らない。「男であれ女であれ、自分には合わない」「女でも男でもない存在になりたい」というような「Xジェンダー」の存在も知られるようになってきており、MtXやFtXといった表記を目にする機会も増えてきている。


(2023/07/28)
MtFやFtMの用語は、性別移行のベクトルがわかりやすいというメリットはあるものの、2020年代に入ると、それぞれ「トランス女性」「トランス男性」という言い回しに置き換わってきている。
また「Xジェンダー」は元々和製英語であったが、これもやはり2020年代では国際的にも通じる「ノンバイナリー」のほうが主流化してきている。
これらに限らず、性の多様性に係る用語は変遷・変動が速いペースで起きがちなので、各自が注意して情報収集に努める必要はあるだろう。
「ノンバイナリー」は、上述の「Xジェンダー」を代替する意味合いの他に、そもそも男女二元的な性別制度に収まりたくない・収まれないセクシュアリティ全体を表すことも可能で、広くは「セクシュアルマイノリティ」の言い換えに用いられている場合もあるだろう。